初カレとの電話

に初めての彼氏ができたのは中学一年生の夏。お相手は一つ年上の先輩で、サッカー部のエースでもある大空大舞。何を隠そう、サッカーの天才・大空翼の、双子の息子である。
一方、は日向小次郎の次女で、類稀なる美貌と天性の才能に恵まれ、今や押しも押されぬトップアイドルの座を掴んでいた。本業はモデルだが、女優やタレントとして幅広くテレビに出演している彼女は、特に十代の女子の間ではカリスマ的存在だ。
「こんな娘が欲しい」、「こんな妹が欲しい」、「こんな彼女が欲しい」。世の男性達の理想と夢を具現化した姿がだった。
勿論、そんな彼女に大舞が夢中にならない筈がない。大舞はサッカーの練習、は芸能活動で忙しい為、互いに学校ではなかなか会えないのだが、その代わりに毎晩、電話で長話をするのが日課になっていた。
その日も、夕飯とお風呂を終えて自室に戻るや否や、の携帯には大舞から電話がかかってくる。

「もしもし」
ちゃん、おれだよ。今、練習が終わったんだ」
「わたしも、今お風呂から上がったとこ」

は紙パックに入ったいちごミルクを飲みながら、ぼふっと音を立ててベッドに腰を下ろした。

「今日は学校に来てなかったんだね」
「うん、撮影で忙しくて結局行けなかったの」
「今は何の撮影やってるの?」
「今度、月曜日の九時から始まる恋愛ドラマだよ」

はヒロインの年の離れた妹という、結構重要な役を与えられている。姉の恋愛に深く関わってくるキーパーソンなのだ。

「おれ、絶対に観るよ」
「ふふ、ありがとう」

それから、と大舞は中学生らしい会話に戻り、「サッカー部の××くんと一年生の○○ちゃんが付き合っている」とか、「野球部の△△くんは吹奏楽部の□□ちゃんに片想い中」とか、他人の噂話に花を咲かせていた。

「うそー!野球部の△△くん、お姉ちゃんにも告白したって聞いたのにー」
「なんだよアイツ、フラれたから乗り換えたのか」
「うわ、ちょっと顔が可愛い子だったら誰でも良かったんじゃない」

の姉・は一つ年上で、大舞とはクラスメイトである。そして、大舞の双子の片割れ・疾風の彼女だ。従って翼の双子の息子はそれぞれが、日向の娘を恋人として得たことになる。
も母親に瓜二つの美貌で、ほぼ同じ顔をしていた。二人を見ればすぐに姉妹だとわかる。性格は正反対なので、姉派になるか妹派になるかは好みの問題だろう。
因みには芸能活動はしておらず、学園では成績優秀、運動神経抜群で、超が付くほどの優等生。この秋には生徒会長になることが決まっていた。

は疾風と付き合ってるしな」
「なんかラブラブみたいだね」
「うん、疾風のヤツ、毎日練習張り切ってる」

翼の血を受け継いだ二人の息子。大舞は父親譲りの天才肌だが、疾風は努力の人だと聞いている。ちょうど自分と姉のようだ。

はなかなか学校に行けないけど、大舞くん、浮気しちゃダメだよ」
「誰が浮気なんてするもんか。みたいな可愛い彼女がいるのに」
「やだ、照れるじゃない」
「ほんとのことだよ」

もう、大舞くんってば。満更でもない口調でそう呟いた直後、股間にむず痒いような感覚が走る。

(あ、おトイレ行きたくなってきた……)

冷たいいちごミルクを一気飲みした所為だろう。下腹部にズンとした重みがあるが、まだ我慢できると高を括っていた。あとは適当なところで電話を切り上げて、トイレに行けばいい。

「……でさ、国語の時間にアイツが」
「そうなんだぁ」

は足をそわそわともじつかせながら、大舞の言葉に相槌を打つ。冷たい床に座っていると余計に尿意が増しそうなので、ベッドの上に座り直した。ブランケットをお腹の辺りにかけていれば、少しはマシかもしれない。
そこから更に十分以上耐える。足を曲げたり伸ばしたり。微かに電話を持つ手も、声も震えてきた。既に下腹部はパンパンに張っている。

(くぅ……)

大舞くんごめん、ちょっとお手洗いに行ってからまたかけ直すね。
そう言えば済む話なのだが、から見る大舞は一つ年上というだけで大人っぽくて、そんな彼の前で「トイレに行く」なんて口に出せない。いくらオシッコに行きたいとが思っていても、大舞に「大」のほうだと勘違いされるのも嫌だし。

(ああぁ、でももうキツいよぉ……)

ありったけの力を込めて尿道を締めても、蛇口から水滴が落ちるように、尿がポタポタとショーツに染み込んでいく感触がある。部屋に一人なのを良いことに、ハーフパンツの脚の隙間から指を差し入れ、ショーツのクロッチの部分に触れると、真ん中の辺りが微かに濡れていた。

(ひぃ、おちびりしちゃってる)

そして我慢のし過ぎで下腹が痛い。冷房の効いている部屋だというのに、額に汗が滲んだ。

「ふ、ぁ……」

尿道括約筋を締め上げても尚、じわりと漏れ出るオシッコの熱さに、は思わず声が洩れる。

ちゃん?」
「あ、ごめんなさい、なんでもないの、ちょっと欠伸しただけ」
「そうなの?もしかして、疲れてるとか?」
「う、うん、そうかも、撮影がハードスケジュールだったから。ごめんね、大舞くんも練習で疲れてるよね」

パニックになる余り、早口でそう告げた。電話の向こうで、大舞の声が優しくなったのがわかる。

「そんなことないよ。おれはちゃんの声を聞けるだけで嬉しいから」
「大舞くん……」

いつもならそんなやり取りの甘さに浸ることができるのだが。

(今は無理、ってか、これ以上出ると、部屋着に染みちゃう……)

頻りに尻の下に手をやってみるけれど、まだ濡れてはいない。この辺で早く切り上げてお手洗いに行かねば。

「今日は、この辺にしておこうか。ちゃん、明日も撮影で早いんだろ」
「う、うん」
「疲れてるなら、今夜はもう早く寝たほうがいいよ」
「ごめんね、大舞くん」
「いいんだよ、気にしないで。また明日ね」
「うん、また明日」

大舞の声は少し寂しげだったが、今のにフォローする余裕はない。とにかく助かった。通話ボタンをオフにし、携帯をベッドの上に放り出すと、彼女は転がり出るように部屋を出た。幸い、二階にもトイレがあるので、廊下の端までパタパタと駆ける。

「え……」

誰も使っていないと思っていた二階のトイレには照明が付き、ノックすると「はぁい」と姉の声が返ってきた。

「お姉ちゃん……?」
「うん。ちゃん?」
「そうだけど……。ねえお姉ちゃん、トイレ代わって」
「ええっ、今入ったばかりだから無理だよ」

排泄音を消す水音が中から聞こえてくる。

(あ、あぁ……。今、この音はらめぇ……)

思わず、ガクッと膝が折れた。シャアァァとのショーツの中にもくぐもった水音が響く。すんでのところで全壊は免れたが、とうとうハーフパンツの股間の辺りが濃く染まり始めていた。

「……っ!」

一刻も早く階下のお手洗いに、とは根性でオシッコの出る穴に力を入れ、階段を下りてゆく。けれど、脚はガクガクと震え、一歩踏み出す度に一滴ずつオシッコが漏れているようだ。

「くうぅ……」

階段を降りたらお手洗いまではすぐである。あと一歩、というところで、一際大きな尿意の波がの小さな体を飲み込んだ。

「やっ、出ちゃだめえええぇぇ」

下腹を貫くような鈍痛に耐えかねてしゃがみ込む。肩幅に広げた脚の間から、最初はポタポタと滴っていたものが、激しい水流となって床に叩き付けられた。

「やだ、お願い、止まって……」

無理な願いだとわかっていても、願わずにはいられない。膝がしらに額をくっ付けて洟を啜ると、アンモニアのツンとした臭気が鼻をついた。

「ねぇ、今、声が聞こえなかった?」
「どこで?」
「玄関のほう。わたし洗い物で手が離せないから、小次郎見てきてよ」
「わかったよ」

リビングに続くドアが開く。は顔から火が出ているのではないかと思うほど恥ずかしくて、顔を上げられない。しかも我慢に我慢を重ねた尿意を解放するのは、なんだかいけないことをした後のような快感がある。

(お漏らししちゃったんだけど、気持ち良い、みたいな……)

しかし自分の周りに拡がる水溜りを見ると、はっと我に返った。もう、お漏らしが許されるような年齢ではないのだ。親に見つかったら叱られるに決まってる、と大きな瞳に涙を浮かべた瞬間、頭上で「わっ」と驚いたような声が聞こえた。

「パ、パパ……」
「え、……?どうしたんだよ、つか、え……」
「で、電話に夢中で、その……」
「はぁ!?何やってんだよ……」

の姿を認めた父親は盛大な溜息をつく。

「ご、ごめんなさいっ……!」
「で、全部出したってわけか」
「う、うん……」

頭の上で、「ったく……」と呆れた声が聞こえた。それでも父親は、をそれ以上叱らない。

「今度からは漏らす前にトイレ行けよな」
「はぁい……」
「なになに、さっきの声は何だったの?」

リビングからひょいっと母親が顔を出した。

「マ、ママ……」
「え、ちゃんお漏らししたの?」
「電話に夢中になってたんだと」
「あら、大舞くんとの電話?」

は二重にも三重にも恥ずかしい思いをしながらこくりと頷く。お漏らししただけでも充分に恥ずかしかったのに、両親に見られ、しかも電話の相手までバレているとは。母親は隠すことなくにんまりと笑っている。

「わかるわよぉ、付き合い始めたばかりの頃って言えないのよね」
「そんなもんか?」
「小次郎は女心がわからないかもしれないけど。わたしだってあなたと電話してて、何度もピンチの時があったから、ちゃんの気持ちはよくわかるのよねぇ」
「え、マジで?」

母親はしまったと言う感じで口元を押さえた。ご、誤解しないでね、いつもギリギリセーフだったんだから!

「と、とにかく、まあ、思春期の女の子ってそんなものよ。だから小次郎、ちゃんを責めないであげて」
「わかったよ」

じゃあわたし洗い物の続きしてくるから、と母親はそそくさリビングに戻っていった。取り残された二人は、ぽかんとしてその背を見送った。

「取り敢えず着替えような、
「ん……」
「ほら、立てって」

はゆっくりと立ち上がる。太腿の裏側を幾筋もの水の跡が伝っていた。ショーツどころか、ハーフパンツまでペッタリと肌にくっ付いて気持ち悪い。

「どんだけ我慢してたんだ、前も後ろもびしょ濡れじゃねぇか」
「や、ぁっ……!言わないでってば、恥ずかしいんだから」
「今度から電話する前にちゃんとトイレ行けよな」
「はぁい」
「あと、途中で我慢できなくなったら大舞にちゃんと言うこと。そうしないとが困るだろ」
「はぁい」

そんな基本的なことを注意されるなんて、なんだか小さい子みたいな叱られ方だ、とは思う。けれど、全く悪い気はしなかった。

普通に起こりそうなシチュエーションですね。